副音声 final edition.

#75 THE COLOR OF LOVE

 長いことずっとあたためていたすごく大事な気持ちも、ちょっとした瞬間に思いついたくだらないギャグも、唾を吐くみたいに投げやりな怒りも、色とりどりの紙で幾重にもラッピングしてさらにリボンまでかけて贈りたいほど押しつけがましい愛情も、ほんのちょっとのすれ違いで擦れたところから煙が立った失望感も、雨の中に捨てられた子犬みたいに縋りつきたかった僅かな期待も、あの時の私には全部が全部一緒くたで、もう区別なんかできなかった。

 どれもこれも単純だった。
 ただ、あなたに伝えなきゃいけない。そういうものに違いなかった。

061211

#76 JUST ANOTHER WAY

 本当は、言葉自体になんの力もないってことは、解ってた。

 だけど憶えていてください。私はなにも、たまたまここに言葉があるからというだけの理由で、単に便利な道具としてそれを使おうと思ったわけではないということ。

 あの時、あなたと私の距離がこれだけあって。
 どうしても知って欲しい気持ちがここにあったから。

 それを伝えるためには温もりでも視線でもなく、どうしても言葉が必要だったということ。
 言葉じゃなくちゃ、だめだったということ。

061206

#77 THE BEAUTIFUL DAY

 何の気もなく転がしたどうでもいいような気持ちが、大きくなって自分にはね返ってきた夜があって、私はそのとき、言葉の重さに笑った。

 とても大切に心にしまってきた大きな気持ちが、私以外のすべての人にとって存在しないも同然だと知った夜があって、私はそのとき、言葉の重さに泣いた。

 だから、言葉はすごいんだ。
 だから、私は言葉を決して裏切ることが出来ないんだ。

061116

#78 END OF THE ROAD

 そうやって積み重ねすぎてしまった、たくさんの言葉。
 積み重なったそれは、今や私を押し潰してしまうほどの重さになった。けれど、私は別に後悔なんかしない。その時その瞬間を後悔しないために選んできた道の結果がここにあるだけでしょ。どうってことない。

 最終的に泣いたって、本当はけっこう長い間笑ってた。
 バランスはとれてる。

061028

#79 DAYS OF DAYS OVER YOU

 そんでも、あたしは幸せだと思う。
 
 あなたと出会って、傷付くことや悲しむことがたくさんあったけど。正直言って、そのたんびに出会わなきゃ良かったのにって思ったけど。そんでも。
 それ以上に、出会えた喜びのがずっと大きい。
 
 迷わずにそう言えるんだから、やっぱあたしは幸せだと思う。

061010