#80 IDIOM OF LOVE
大好きだったよ。今でも好きだよ。
もう二度と口に出して言うことはないけれど、本当のところその2つのセンテンスは、まるで慣用句のように繋がった状態で、いつでも心の中にある。
一度でも大好きになったものを、嫌いになれる日なんて来ないと知ってるから。死ぬまで好きであり続ける自信があるから。それだけが、ひどく不器用な私にも、「大好きだった」という気持ちを証明できる唯一の方法のように思えるから。
だから、ずっと心に焼きつけ続ける。
大好きだったよ。今でも好きだよ。
もう二度と口に出して言うことはないけれど。
060922
#81 WONDERFUL DAYS
時間の感覚なんて、あまりに主観的すぎた。
ましてその時、その目に何が映ったのか。肌にどんな温度を感じたのか。どんな音が聞こえ、どんな匂いを嗅ぎ、それによりどんなことを考えたのか。
自分の仔細すら思い出せない今の私に、あなたの何が解るだろう。
たまたま横に並んでいた。
私たちは、それだけの関係だったのかもしれない。と、今は思う。
そのことに何の意味もないとは思わないけれども。
060811
#82 No One Else Comes Close
だけど不思議なもので、あなたの存在感というものは、私の中で大きくなればなるほど逆に現実味を喪失していくような気がしていた。
あなたを知れば知るほど、心を占めるリアルの割合は次第に侵蝕され、私は夢見がちになっていたかもしれない。だから私は「自分がこんなに妄想家だったナンテ全然知らなかった」などと思って、ちょっと笑ってみたり、自分に呆れてみたりした、けれど。
今はそんな過去の自分を思い返しては、さらに笑い、呆れるばかり。
妄想が恋の実体であることを忘れる程、リアルに拘り過ぎた恋の末路。
060714
#83 Who Let You Go
もしもあなたが、目の前にあるものしか信じられないと言うなら、私はどんなことでもあなたの目の前で実行して、真実であることを証明してみせたかもしれない。
それをしなかったのは、怠っていたわけでは決してなく。
ただ、あなたがきっと目の前にある以上のものを読み取ってくれるだろうと勝手に思いこんでいたせいだ。そんな思い上がりに、「信じる」なんて安直な言葉を当てはめたせいだ。
今にして思えば、私こそが、目の前にある事実を信じられない人間だったのに。
060712
#84 All You Need Is Love
私は、それの必要性を説くことができたかもしれない。あるいは、それを手に入れることによって満ち足りた日々が約束されると吹聴したって良かったのかもしれない。
だけど、それもできなかった。ただ欲しいから欲しいのだとしか、言えなかった。
いつかは必ず失うものをそうまでして手に入れる必要はないと、あなたは言った。とても淋しそうに。
結局のところ、一瞬触れただけで掌に収まりはしなかった「それ」について、あなたはどこかで「ほれ見たことか」と笑っているだろうか。やっぱり、淋しそうに。
060604