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0731
帰宅ラッシュのほんの十数分。戦うようにして繰る短編集。
お手軽な感動をお手軽に享受して、なんか涙ぐんでる自分に気付いて、世の中捨てたもんじゃないと思う夕方六時。
0730
誰も僕の存在に気づいてくれない、と思ってた。
こんな水面下でジタバタしてるのは、自分だけだと思ってた。
本当は、他人から見えないからこそ其処を水面下と呼ぶのであり、実際のところ、僕も他人の水面下での動きに気づかずにいただけなのだ。
0729
泣きたいくらいの幸せと、笑っちゃうほどの切なさと。
微妙なミックスを重ねに重ねて、あたしはどんな顔しよう?
0728
祭囃子と太鼓の音に躍らされて。
公園の隅っこ、提灯に照らされて、初めて親に隠れて飲んだビールの苦味だとか。年に一度の夜遊びが許される夜に、初めて一緒に歩いた制服じゃない姿の初恋の君だとか。
何度夏が来ても、きっと鮮やかに思い出す、『あの夏』の匂い。
0726
蝉の声も、赤い夕焼けも、汗ばんだ首筋も、今はノスタルジックな甘い痛みにしか成り得ない。夏という季節が、ヒトを裸にさせることを楽しんでいることを知ってしまった時から。
あなたは夏のために罪深くなり、そして歓喜へと導かれる。
0725
なんでもかんでも早い者勝ちというわけではないけれど。
嬉しいときも、哀しいときも、病めるときも、健やかなるときも、そのときの気分にぴったりの歌を、とうの昔に誰かが作って、歌って、そして世に出してしまっているというその事実は、とてつもなく虚しいと思う日も、あったりします。
0724
届かない言葉でも、敢えて、発して。
それを聞いて欲しい特定の誰かには届かないかもしれないけれど。想いが音に成り、或いは光に成り、淀んだ空気にふわり溶け込んで、それから、意外なところに佇んでいる不特定の誰かに偶然届くのだって、きっと悪くない。
そんな偶然に流されてみるのだって、きっと悪くない。
0723
アサガオの観察日記なんて、ろくに書けなかった私だけれど。
アナタの観察日記なら、きっとすごいのが書けるよ。書かないけど。
0722
嘘をつかない代わりに、またひとつ、心の中に秘密のエリアを増やすのです。
誰も踏み込めないように高い壁を配置して、その中で、あたたかい妄想を、狂おしい罵声を、耐え難い快楽を、少しずつ育てて、そして、どうなる?
嘘でもいい、言葉に発することができたら。
0720
いろんなものがこぼれてしまいそうで、胸を押さえる。
そんなことしたって何の解決にもならないし、そんなことしなくたって実際には何も起こらないのも、本当は知っているけれど。どうにもならない事にジタバタしてる今が、あまりにも気持ちよすぎて。
あの頃していた片想いみたい。
0719
自分の恋愛だけは、他の人とは違って崇高である、と信じていた頃の私はイタイ。
けれど、結局、誰もがどこかで同じように恋愛していることを悟ってしまってからの私は、ある意味もっとイタイのです。
0718
結果として傷つくことになったからって、『あのときのあの決断が失敗だった』なんて、後悔するのはやめとけよ。運命の所為にするのは、最高に情けないかもしれないけれど、最高に潔いって考え方も出来るだろ。こうなる運命だったんだよって力なくとも笑ってりゃいいよ。
そしたら、もう次の運命が背後にスタンバイしてる。
0717
あの夏の私たちは、こんなに浮かれた夏なんてもう来ないかもしれないというくらい浮かれまくっていた。
今になって思えば、そのときの私たちは「失うものがある」ということを考えることすら、放棄していただけだったのだ。
だけど、それだから、あの夏は楽しかった。
0716
あたしの感情を増幅させるあんたが、いけないんだ。喜怒哀楽の触れ幅が大きくなってしまったあたしは今や、笑いすぎるし、怒りすぎるし、泣きすぎる。あんたを想いすぎるし、憎みすぎる。
笑えない毎日と、泣いてばかりの毎日って、どっちがマシなんだろう。
0715
私のカラダだけでなく、ココロまですっぽり抱きしめた貴方を思うとき。
私はカラダだけでなく、ココロからしっかり濡れている自分に気づくのです。
0712
気持ち悪くて我慢ならず、とうとう喉に指を突っ込んで引っ掻き回して、ようやく吐瀉することのできた悪の元凶は、出してみれば何て事のない小さくて可愛らしい物体だった。そいつが「嘘は対象者を傷つけ、秘密は当事者の心を重くする」とか当たり前のことを偉そうに言うので、僕は単に苦笑した。
こんなものが僕の体内を巣食っていると信じて恐れていたなんて、なあ。
0711
10年前、恋愛に情熱ぜんぶ捧げられるアンタが羨ましい、と友人が言った。
10年後、確かにあの頃の私が羨ましい、と今の私が思った。
0710
今日知ったことや気づいたこと、見るもの、聴いたことば。
大切なこととか、そうでないこととか。
そういうものたちを、『いつまでも忘れない』んじゃなくて、『いつでもどこでも思い出せる』ようになれたら、きっといいだろうなあと思う。
0709
大人になって覚えたこと。
理由もなく泣きたくなった夜に、我慢する必要なんて無いということ。だけど、絶対にそのことで人に迷惑をかけてはならないということ。
頭で理解してから、上手にこなせるようになるまでには、時間が掛かるけれど。
0708
ひとはひと、じぶんはじぶん。何かを可能にする呪文のように、そんな口癖を身に付けながら、今までずっと生きてきたんだ。
本当は、他人を幸せにする一つの要素が自分を全く幸せになどしないことは、ほんの少しの優越感ととてつもない虚脱感しか僕に与えないのに。
0704
『会える・会えない・会えない・会える…』
大切な時間と大切な時間の間にあるどうでも良い時間なんて要らない。そう思った私は、飛び石みたく上手にスキップするやりかたを覚えた。
だからといって、石の上に立ち止まることもできないから、時間の経つのが哀しいくらい早い。
0702
憂鬱なんて要らないけれど、憂鬱が存在しない人生も考えられなかったり。
強くなることは難しいけれど、弱くならないことはもっと難しかったり。
0701
カレンダーを捲って、夏の到来を知る。
私の一番好きな季節には山ほどの楽しい思い出があって、これからもそれらは増えていくと思うけれど、どんなに時が経っても笑って語ることも許されないような夏もあった。
その夏のことを、私は決して忘れちゃいけないと思う。
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