051 「海の鳥・空の魚」鷺沢萌 2003/3/5〜6読
なんでもないことを書いている掌編が沢山あります。
なんでもないことをなんでもないように書くということは、実はなんでもないところに何かがあるように書くよりかは、はるかに大変な作業で、同時にそれが「なんでもないこと」であるがゆえに、多くの人の共感を呼ぶことができるのだろうと思います。
「共感」を求めて小説を読む人たちには、この短編集、お薦めなのではないかと思います。
うーん、だけど正直なところ私はこの手のセンチメンタリズムはあんまり好きじゃないのかもしれません。否定するほど嫌いではないのですが、わざわざ書物を読んで確認することではないと思うのですよ。
自分の意志で歩くこと。その際、きちんと大地を踏みしめること。時々、その自分の脚をきちんと見ること。
それでいいんじゃないかと思うわけです。
052 「boys don't cry」田口賢司 2003/3/7読
田口賢司という人は、小説家というわけではなく、放送業界の人らしいのだけれど、私はよく知りませんでした。無知ですみません。ただ、80年代にメディアを何らかの形で揺るがした、という感じなんだと思います。
読んでみれば確かに、どこで切っても80年代の形をしている金太郎飴のような小説です。とても短い段落が断片的に織り成す耽美な世界。意味の解らないことは多々ありますが、だいたい各段にかならず印象的な一文がこめられています。おそらく彼は、それを書きたくて文章を綴っているのだろうというセンテンスが、おのずと浮かんできます。80年代だろうがいつだろうが、変わらない真実と言いましょうか。そういうものです。
ややアンダーグラウンド目な、セックスやらドラッグやらなにやらを描いている作品は、大抵はそういった風俗を描こうとしているわけではないのに、表面的なものばかり取り沙汰されるんだろうな、と思います。
大切なのは、そんなことじゃないんです。そういうのに気付かせてくれる書き方をしています。
053 「古えホテル」菊地秀行 2003/3/8〜10読
菊地秀行というと、名前は知っていましたが、私などは著作のタイトルを見ただけでとても萎えそうな(いや別に悪というわけではなく、私の求めているジャンルとは違う人だという)イメージがありました。たまたま古本屋で見かけたこの一冊に、「あれ、こんなのも書くんだ?」といった驚きをもって読んでしまいました。
ホテルというのは実際不思議なところです。昨日誰が寝たか解らないベッドで今日は別の人が寝る。古いホテルになればなるほど、いろいろな物語を吸収しているに違いないのです。そういったホテルの存在感を中心に据えた「人間たちの物語」です。
つまり、ホテルや、それを取り巻く奇怪な物語を描いているかのように見せかけてはいますが、本当は「人間の生きかた」を描いている。そういう作品です。
またひとつ私の中で壁が壊されてしまいました。
そうやって壁が壊されてゆくことに、今は心地よさをかんじます。
054 「熱血じじいが行く」ねじめ正一 2003/3/11〜12読
何はともあれ長島茂雄です。野球好きにはもちろん、そうでない私にも充分大変楽しめるエンターテインメント小説です。
人生の濃さというのは、いかにバカバカしいことにも全身全霊をかけられるかどうかによって変わってくると、私は常日頃から思っておりますが、それが真実だと証明するには、きっとあと50年もこの生きかたを続ける必要がありましょう。それでも、それを簡単に証明したいと思うなら、まずはこの作品を読めばいいのです。
草野球に命をかけるオッサンたちとジイサンたちの人生は、どんなに輝いていることか。ここまで命をかければ、神(長島茂雄)との遭遇だって夢じゃありません。否、必然と言っても良い。
コミカルなタッチに騙されるだけじゃないんです。
(これを読んで、あ、野球チームを作れば登場人物が多くてもアリじゃん、と思ったのは内緒。)
055 「まほうの電車」堀田あけみ 2003/3/13〜14読
恋愛小説というのを、私は好んで読みません。恋愛を中心に人生が廻っているわけではないのだから、小説でも中心に据えられるべきではないと思っているのです。
とゴタクを並べても、たまたま手にとって、読めば読んだで面白いのが恋愛小説(映画もドラマも同じ)です。何で面白いかというと、それはゴシップ的な意味なのですが。他人の恋愛って気になるよね!とか。
で。これ重要なのですが、生意気だけどちゃんと考え方がしっかりしている年下男に影響されて徐々に女を磨いてゆく年上女、という構図は、私の中では永遠の王道です。これ以上に萌えるシチュエーションはありません。以上。
一話ごとに舞台が地下鉄の駅をひとつずつ進むようになっているそうで、そういったものも併せて楽しめれば尚良いです。私は名古屋の地下鉄については全く解らなかったので、だめでしたが。残念。
←